ディラック方程式
やってることは、ディラック方程式の導出とあまり違いません。
「質量の同じ2個の実スカラー場は複素スカラー場と等価である」という記事をみていて、ふとこう思った。「じゃあ、質量の同じ2個の複素スカラー場ならどうなるの?」と。ググっても見つからないので自分でやってみることにした。
この系のラグランジアン密度は
あるいは
[tex: \varphi =
\begin{pmatrix}
\varphi_{1} \\
\varphi_{2}
\end{pmatrix} ]
として、
である。アスタリスクは複素共役、ダガーはエルミート共役(転置+複素共役)を表す。ここでは後者を使う。
から、二成分のクラインゴルドン方程式
が得られる。因みに計量 はである。
どう考えるか。
(1)式を単純に、たまたま質量が同じ無関係な2個の複素スカラー場とみることはできるだろう。しかし、ここでは無関係でない場合を考えよう。
1次行列ならの解はしかないが、2次行列の場合は無数にある。
それをうまく使って
と変形したい。
因みに、は2次の単位行列、は2次行列を成分に持つベクトルである。
(2)式が(1)式に戻るためには
でなければならない。ここでは2次の零行列である。
例えばとしてPauli行列を取ればよいだろう。以下ではは3個のPauli行列のベクトルとする。
ここで、を次のように定義する。
これを、(2)式に代入すると次式が得られる。
さてとは何だろうか。
(3)(4)式を空間反転させると、次のような式が得られる。
ここで
である。
ここでとおくと
となる。
よくわからないが、 はの空間反転解に関係していそうだ。
ここで
[tex: \xi =
\begin{pmatrix}
\varphi \\
\psi
\end{pmatrix} ]
とする。
は
[tex: \alpha_{i} =
\begin{pmatrix}
\sigma_{i} & O_{2}\\
O_{2} & -\sigma{i}
\end{pmatrix} ]
は
[tex: beta =
\begin{pmatrix}
O_{2} & I_{2} \\
I_{2} & O_{2}
\end{pmatrix} ]
とする。すると(3)(4)式は
と1本の式にまとめることができる。ここでは4次の単位行列である。
空間微分の部分を右辺に移すと
ここで、は以下を満たす。
ここで、は4次の零行列である。
これで分かった。(5)式はディラック方程式になっている。そして、質量の同じ2個の複素スカラー場は1個のディラック場と等価である。
【追記】2022.08.02
空間反転の考察が間違っていたので修正しました。