条件付き確率
検定をすることもあるけど、基本的に確率論は苦手です。
個人的な興味で、条件付き確率が関係する課題に取り組んでいたときのこと。
条件付き確率が演算に対応していないとどうしようもないという結論に達した。
さっそくググってみるが見つからなかったので、自分でやってみることにした。
端的に言えば、演算を導入して、任意の確率測度に対して
を成り立つようにするのが、今回の目的である。
まず有限加法族を拡張しよう。加法族じゃないの?と思う人もいるだろうが、冒頭の課題には有限加法族の拡張で十分だからである。
【定義】
空でない集合と なる空でない が以下のを満たすとき、は上の有限条件付加法族であるという。
は、演算について閉じている。
ここで、は補演算、は交叉、は結合で、は以下の ~ を満たす上の2項演算である。
新たな演算について、性質をしらべておく。
以下では、とする。
また、イコールの上の文字は変形に使用した公理ないし定理を表している。
【】
証明:
【】
証明:
【】
証明:
【】
証明:
【】
証明:
のとき
のとき、であるからでとおけば
【】
証明:
のとき、であるから
のとき
【】
証明:
【】
証明:
【】
証明:
ここでだから、でとおけば
【】
証明:
【】
証明:
のとき
のとき
【】
証明:
のとき
のとき
性質はだいたい分かったので、次へ行こう。
まず必要最低限の定義だけしておく。
【定義】
空でない集合と上の有限条件付加法族の順序対を可測空間という。
可測空間に対して、関数が以下のを満たすとき、は上の確率測度であるという。
且つ、ならば
また、可測空間上の確率測度全体の集合をとする。
ここで、後で使う補題を2つ証明しておく。
【補題1】を可測空間とする。
任意にとをとり、とおくと、である。
証明:
且つ、とする。
このとき、であるから
【補題2】を可測空間とする。
任意にとをとる。但し、とする。
このとき、とおくと、である。
証明:
且つ、とする。
これで、演算で条件付き確率を表せるのかといえば、どうも確率測度に関する条件が足りていないようだ。
そこで、通常の条件付き確率でも成り立つ次のを公理として採用する。
【】
を可測空間とする。
このとき、任意のと任意のに対して
且つである。
これで、次の定理が証明できる。
【条件付き確率の定理】
を可測空間とする。
このとき、任意のおよび任意のに対して以下が成り立つ。
特に、のとき
である。
証明:
で場合分けを行う。
の場合
よって成り立つ。
の場合
よって成り立つ。
且つの場合
さらにで場合分けを行う。
の場合
より
よって成り立つ。
の場合
とおくと、補題1,補題2からである。
ここで
よってより
とりあえず目的は達成した。
ざっと見直してみたが、のをにして
「でとおけば」といったあたりを
「でとおけば」のように置き換えれば
加法族の拡張も同様にできそうだ。必要ないのでしないけど。
さて従来の条件付き確率との違いは
は演算である。
の場合でも、が事象である以上は値を持つ。(但し、条件付き確率の定理からは値を決定できない。)
ネスティングが可能である。(例:)
くらいだろうか。
長かった。しかし冒頭の課題を思い出せば、スタート地点にたどり着いただけなんだよな。