条件付命題論理のセマンティクス(1)
「条件付き確率的含意をもつ命題論理のセマンティックス」の方が正確なのですが。
ネットで条件付き確率と命題論理について検索していたときのこと。
「条件付き確率で記号論理を展開できない」と主張するページを見かけた。
気になって調べたところ、David Lewisのトリビアリティー・リザルト(Lewis's triviality result - Wikipedia)の焼き直しだと分った。
まあ面白い主張なのだが、こうも思う。「奇妙な結果が導き出されるなら、前提条件が間違っているだけじゃないの」と。
結局自分でやってみることにした。
ところが、いきなり壁に突き当たる。
古典的命題論理()の場合は、それぞれの命題記号に有限加法族上の演算が対応しているため、すんなりと理論が展開されていく。
しかし条件付き確率の場合は対応する演算がないため、ことあるごとに確率論に立ち返って検証しないといけない。これは不便だ。
「条件付き確率」で、有限加法族の拡張を行ったのはこんな事情があったからだ。
さて前置きが長くなったが、これで始められる。
【定義】(論理式)
命題変数全体の集合とする。
このとき論理式全体の集合を以下で定義する。
また補助的な論理記号を以下で定義する。
カッコの多さが気になる。
そこで論理記号の結合の強さを
とする。また同じ結合の強さの論理記号が続く場合は左連結とすることにして、一番外側のカッコも含めできるだけカッコを省略することにする。
例えば
のような感じである。ただし、わかりにくくなる場合はカッコを省略しないことにしよう。
【定義】(真理値関数)
論理式全体の集合、空でない集合と上の有限条件付加法族に対して、関数がを満たすとき、は上の真理値関数であるという。
【定義】(ストラクチャー)
論理式全体の集合、空でない集合、上の有限条件付加法族、上の真理値関数とする。
このとき、順序対をストラクチャーという。
【定義】(真・偽・恒真)
ストラクチャー、とする。
のとき、はで真であるといい、と書く。
がで真でないとき、はで偽であるといい、と書く。
また、任意のストラクチャーに対してが成り立つとき、は恒真であるといい、と書く。
が恒真でないとき、と書く。
先が長いので、今日はここまでにしよう。